大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(行ナ)31号 判決

原告主張の特許庁における手続に関する事実は、当事者間に争がない。そして、この争のない事実によれば、原告の本件抗告審判の請求は、初審の審決の送達された日から三七日目にされたものであるから、右手続に適用される旧特許法(大正一〇年法律第九六号)第一〇九条所定の抗告審判請求期間経過後にされた違法があることが明らかであり、仮りに、右抗告審判の請求が抗告審判請求期間懈怠に対する追完申立であるとしても、他に同庁の手続上右期間不遵守の事由について特段の主張立証のされなかつた以上、この欠缺は補正することを得ないものとし、本件抗告審判の審決が抗告審判請求人たる原告の請求を却下したことは、結局、旧特許法第一一〇条の二に照して相当であつて、右審決には、何ら違法のかしはない。(なお、原告は、本件口頭弁論終結後にいたつて、その再開を求め、かつ、原告は右初審審決に不服であつたので、さらに調査検討し適当な代理人に依頼し抗告審判の請求をしようとしていたところ、たまたま昭和三四年一一月半頃からインフルエンザにかかり病勢悪化し、同月二〇日頃からは高熱で心神もうろう状態が続き、数日にして同月二七日ようやく小康を得たときには、すでに抗告期間を経過していた。抗告審判請求手続未済に気づいた原告は、取り急いで弁理士大野晋に連絡し右手続方依頼し、同弁理士において同月三〇日本件抗告審判請求の手続をしたのである。同弁理士は、原告が不測の病気というやむを得ない事由で法定の期間を遵守できなかつたので、その事由がやんでから法定の許容日数内である三日目に、右抗告審判を請求したもので、この請求は、適法に係属しているものであり、原審判手続においてこれを陳述すべきところ、その機会を与えられないまま、抗告審判請求却下の原審決がされてしまつたのであつて、原審決は、やむを得ない事由による不変期間経過について原告がその陳述をする機会のないまま、されたもので審理を尽さない不法がある。しかも、もともと、かい怠した抗告審判請求行為は、右のとおり不変期間経過後法定の許容日数内に適法に追完されており、これは、右のやむを得ない事由の陳述の有無にかかわらないところであるし、一方、この事由主張の欠缺は、審決確定前であればいつでも補正できるというべきであるから、本件のように右事由の伴う不変期間経過後の抗告審判請求が適法と認められる場合には、原審決を取り消し、事案を実体審理に移すべきである。したがつて、原審決は取り消されるべきである旨主張しようとしている。けれども、本件抗告審判請求の追完事由の存否について、原審たる特許庁昭和三一年審判第四六五号事件および昭和三四年抗告審判第二、七八五号事件(以下第四六五号事件または第二、七八五号事件という。)の各記録を調査して見ても、第四六五号事件における被請求人たる原告の代理人は、弁理士大野晋であつて、その審判手続に終始関与していたばかりでなく、原告から同人に対する昭和三一年一〇月一七日付同事件の委任状および第二、七八五号事件の抗告審判請求書中添付書類目録の項の各記載によれば、同弁理士に対しては第四六五号事件に関する抗告審判請求の権限までも特別に授与されており、現に本件抗告審判手続上もこの委任状が援用され来つていることが明らかであり、かつ、昭和三四年一〇月一日頃には第四六五号事件における審理終結通知がされ、同月六日された同事件審決も同月二四日同弁理士に送達されていることが記録上明らかである。したがつて、原告は、その主張するように同年一一月下旬における病勢の小康をまつて同弁理士に本件抗告審判の手続の依頼をするまでもなく、同弁理士(代理人)において、前示授権に基いて法定の期間内に本件抗告審判の請求をすることができ、まず原告の権利保全をはかり得たはずであるから、原告自身における事情はしばらくおき、すでにこの点において、原告について、その責に帰すべからざる事由により不変期間を遵守することができなかつたとは認めることができない。右のとおりである以上、原告の主張については、その余の点について考えるまでもなく、これを採ることができないことは明らかである。

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